プーさんのライヴ評

『プー横丁』のプーさんこと松岡氏が、僕のライヴに関する記事を書いてくださいました。望外のお褒めのお言葉に恥ずかしい気もしますが、素直にうれしいです! ありがとうございます!
※この投稿はフェイスブックから転載させていただきました。

***

遅ればせながら先月下旬の住出勝則さんのライヴの事など

先月下旬(22日)、プー横丁から徒歩7分くらいのところにあるライブハウス「モダン・タイムス」で行われた住出勝則さんと田中彬博くんとのコンサートは本当に楽しかった。あれから3週間以上になるというのに、その感動は今も心にしっかりと残っている。

 コンサートの直後にも何か書き残しておきたい衝動に駆られたけれど、その時に感じた「何か」が分からないまま文字を書き連ねる事を躊躇させるものが私の心の中に在り、そうするのをかろうじて控えた。

 2001年、当時まだオーストラリア在住だった住出さんの、発表されたばかりのソロ・アルバム『Shadow Dancer』を輸入し、プー横丁のHPや通販カタログで紹介することがきっかけとなって住出さんとの付き合いが始まった。2002年に住出さんがオーストラリアから帰国し、日本での活動を本格的に初めて以降、ずいぶん沢山のライヴを見てきた筈である。にもかかわらず、先日の住出さんのライヴには、これまでの演奏から受けたものとは違う「何か」が在った。

 ようやく落ち着いて書けそうに思えるので、少し長くなるだろうけれど当夜のコンサートを振り返ってみようと思う。

 たとえ知り合いのミュージシャンでもライブの構成や曲目など私は事前に訊いたりしないようにしている。そのライブを「初めて経験すること」として100%楽しみたいからだ。

 8月22日の住出さんと田中くんの共演ライヴはそれぞれのソロ演奏があり、アンコールとかで住出&田中のデュエット演奏が聴けるのだろうと勝手に想像していた。ところが、最初からいきなり2人でご登場。殆どの曲をデュエットで演奏するという、第1部だったのである。

 休憩を挟み、始まった2部は田中くんから。いつも通りソロ演奏の1曲目は「君と夢の間の銀の翼」だった。「My favorite things」などを演奏し、「太陽のエチュード!」で最後を締めくくって手堅いソロ・パフォーマンスは終了。

 続く住出さんのソロは、最新アルバムからの曲あり、ビートルズ作品あり、当日にファンからリクエストされたという、めったに演らない懐かしいオリジナル曲ありと、思いつくままに選ばれた演奏曲目のようでありながら、考え抜かれた選曲と構成を感じた。ソロの演奏は普段のざっと四分の一の時間であるが、少ない持ち時間の中でも住出勝則としての「ソロ・ギターの世界」をきっちり当夜の観客に披露した上で「すべて持って帰ってください」と言わんばかりのエネルギーと意志を感じた。

 そんなステージ・マナーや演奏ぶりは、これまでもずっと住出さんのライヴでは感じ続けてきたことである。だが、そのエネルギーであったり1つのライヴ・ステージに賭ける思いであったりの「質量」自体が、今までとは比べものにならないほど彼の中で大きくなってきていると感じる。ビンビン感じるのである。

 「今までとは比べものにならないほど」と記したが、勿論そんなものは数値化して比較できるものではない。それでも「質量」などという言葉を持ち出してまでも伝えたかったのは、住出さんのライヴには自らの存在意義を確かめるかのような、アーティストとしての「のっぴきならない思い」が感じられること。そして、喜びや悲しみや様々な感情が(作品を書き上げた時だけでなく)ライヴ演奏の際にも生身の彼の姿として窺える、ということだ。その無防備ともいえるほどストレートに表現され吐露される彼の感情や思いが(今までもハンパではなかったが)以前にも増して格段に大きく感じられた、ということである。

 当夜の演奏の1つ1つに、自分が何を表現したいのかをハッキリと認識している、ミュージシャン住出勝則の誠実さというかリアリティ(真実味)が深々と心に沁みたのである。

 2014年7月22日のモダン・タイムスのライヴ、本当に素晴らしいコンサートだった。